左の図は頭を半分にした模式図です。この図で、お口の周りの名称を説明します。まず「うわくちびる」は上口唇(じょうこうしん)、「したくちびる」は下口唇(かこうしん)スポットは★印の所を言います。
舌(ぜつ)は分かると思いますが、特に舌の先を舌尖(ぜつせん)と言います。上の顎の赤い部分を硬口蓋と言い下には骨が有ります。軟口蓋(青い部分)の下に骨が有りません。軟口蓋は動く事が出来て発音に関係があります。
いわゆる「のど(喉)」の事を喉頭(こうとう)と呼び、風邪などでのどが腫れるのはここの炎症です。その先に食道と気道があり、食道の先には胃があり、気道の先には肺があります。
まず食べ物を飲み込む事を嚥下(えんげ)と言います。その時舌癖の人の物の飲み込み方を見てみましょう。必ずしも舌癖すべての人がそうではないのですが、舌を前に出して物を食べる癖が多く見られます。特に犬食いと呼ばれる、テーブルの食器に口を近づける食べ方をする人は舌を前に出す癖があります。実は説明も有ります。犬食いのように頭を下げて食事をすると、人の体の作り上、下の顎はどうしても前にそして下方にいきます。その為舌を前に出し易くなります。実は犬食いをする時、体の作りを考えると舌を出すのは自然な動きなのです。そして今犬食いをしていない人でも、小さいころの習慣が残っていると上の右の絵の様に舌を前に出して食事をしてしまいます。
嚥下(えんげ)の際、舌尖の位置の違いで正しい嚥下なのか舌癖なのかが分かれます。嚥下の際、舌尖がスポット(★印の所)に付いている人は正しい嚥下で、上の図では左側です。歯に押し付けるようにしている右側の図が舌癖です。右図では上の前歯が出ていますが、どちらかと言えば、もっと下に舌が有り、上下の歯をむしろ押し出すように舌を使っている人が多いです。
舌を上に上げる動作は、実は母乳を飲むときには必要なことなのです。母乳を飲む際、乳首を吸っているだけでは母乳は出ないそうで、上口唇・下口唇で乳首を覆い、そして舌を上に押し上げる。そうすることによって母乳は出るそうです。子供は母乳を飲む際、舌の挙上運動(上に上げる動作)を毎回していることになります。哺乳瓶はそれに比べると口唇だけで飲めるので、その分舌を挙上する筋肉が鍛えられていないかもしれません。
さらに食べ物を飲み込もうとする時、上の左図は正しい嚥下ですが、舌の中央部が口蓋に張り付いて食べ物を奥に送り込みます。舌癖があるとそれに比べると少し舌が上に張り付いている程度です。ここで、私の経験では今まで見てきた舌癖の方は、ほとんどは口蓋に舌を付けることもままならない方が主でした。それを加味すると舌を口蓋にほとんど付けずに嚥下することも舌癖ではそう珍しくないようです。
物を飲み込む瞬間も上の左図の正しい嚥下では、舌が口蓋に張り付いて隙間が有りません。舌癖ではどうしても隙間が出来てしまいます。
ここで話が少しそれますが、舌癖の方の中でゲップがよく出る人が多いような気がします。医学的には呑気症(のんきしょう)、あるいは空気嚥下症という症状があります。「空気を大量に飲み込んでしまうことによって、ゲップがたくさん出たり腹部膨満感を覚える状態」をいうそうですが、私は舌癖も大きく絡んでいるのではないかと思っています。それは舌癖の模式図では嚥下の際に空隙が多くあり、陰圧に出来ずに空気も一緒に嚥下してしまうから起こると思っています。
呑気症と舌癖の関係は私の推測でしか有りません。しかしこれを読んでいただいている方で、舌癖の心配の有る方、食後によくゲップが出たりしませんか。あるいは子供がゲップをしたら「お行儀が悪いからやめない。」とよく注意していませんか。