歯並びに関して話をする時に、舌に関して触れずに話を進める事が出来ません。「歯並びに舌が関係するの」と思う人も多いと思いますが、矯正歯科は歯並びをかえて、正しい咬合にするのが仕事です。その時舌の動きが正常な方は何の問題もなく矯正が進み、歯並びはどんどん改善します。しかし、舌癖がある患者様は矯正をする時、この舌癖が大きな壁になる事があります。
大人でも舌癖は十分に問題ですが、特に子供それも小さければ小さいほど舌癖は影響が出てきます。小さなお子さんをお持ちのの方は、一度良く読んで自分のお子さんの舌の動きを見てみると良いと思います。
舌は物を飲み込む時や話をする時に活躍しています。また、舌には味蕾(みらい)と言って味を感じる器官もあります。筋肉の塊であり、自分の意志で自由に動く随意筋(ずいいきん)と呼ばれています。しかし、しゃべる時や食事の際に舌の位置を気にしている人はおそらくいないでしょう。自由に動かすことは出来ますが、普段気にしている人はなく本能的に動いていると言ってもよい筋肉です。
左の図を見ると良く分かると思うのですが、上の前歯の真ん中の付け根より約7-8ミリの所に少し盛上つている所があります。ちょうど左の写真の水色の所です。この部分をスポットと呼びます。
これからお話することはこのスポットが分かっていると思って書きますので、実際ご自分でも舌で触ってみてください。若干盛り上がっているのですが、わかりにく人もいると思いますが、位置を舌の感触として覚えておいて下さい。
今度はつばを飲み込んでみてください。その時舌の先は何処に有りますか。先ほど説明したスポットにあれば問題有りません。もし歯に押し付けるようにしている場合、その飲み込み方を舌癖と言います。タングスラストとも呼びます。
違いは舌の先がスポットに当っているか、それとも歯に押し付けているかです。スポットに当っている人は歯に押し付けている感覚は分からないと思います。また、舌癖の人はいきなりスポットで物を飲み込むことは難しいでしょう。
それでは舌癖だと何が問題になるのでしょうか。人は無意識のうちに唾を2000回近く飲み込んでいます。それ以外に食べ物を食べるたび飲み込みます。舌は筋肉の塊であり弾力性もあります。それを毎回歯に押し付けると、歯並びに影響が出てきます。舌で押す事で段々と歯は前に押されてきてしまい、歯並びが乱れいわゆる出っ歯になってきます。やがて上と下の歯は噛み合わなくなり噛み合わせに問題が生じることになります。
噛み合わせで噛んでいるか噛んでいないかは簡単に調べられます。方法は薄い紙を前歯で噛んでみて、「すーと」抜ける人は噛んでいません。見た目に問題がなくても、紙が抜ける人は、矯正という学問から見ると出っ歯であり、不正咬合になります。咬合(噛み合わせ)は見た目だけでなく、上と下の噛み合わせも良くないと正しい咬合(噛み合わせ)では無いのです。そして前歯が噛まないと奥歯で物を噛む時、奥歯にかかる負担が大きくなります。それは長い目で見ると、奥歯を失う要因の1つになります。
出っ歯だけならまだいいかもしれません。「もし舌癖があると最悪反対咬合(受け口)になるかもしれません。」と言ったら驚かれる人もいるのではないでしょうか。反対交互が分からない人もいると思いますので、簡単に説明しますが、上と下の歯が咬合した時(噛み合わせた時)、普通は上の顎が前に出ていますが、反対咬合は逆に下の顎が前に出ている人です。受け口とも言われています。原因は舌癖で下の顎を押し付けているので、下の顎の成長が助長します。そのため反対咬合になるのです。
子供で舌癖があると歯並びの心配があります。舌は筋肉の塊でありスポットの位置で飲み込むと、舌がその弾力で上顎を左右に押し広げて顎の成長を助長します。詳しくは別の所でふれるとして、舌癖だとこのチャンスを失う為、上顎の成長が悪くなります。逆に下顎は加成長気味になります。最悪受け口になる子供もいます。
幾つか舌癖の子供の特徴を挙げてみたいと思います。
1:いつもよく口を開けている子供
2:背を曲げて口を食器に近づけて食べるいわゆる犬食いをする子供
3:下唇が厚くていつもかさかさしている子供
4:口唇に冬場はリップクリームを塗らないといられない子供
5:発音で「さ行」、「た行」、「ら行」が分かりにくい子供
6:舌足らずと言われている子供
上に上げた様な特徴がある子供は、舌の動きを一度見る必要が有ります。